コミュニティ・スクール~あすか野小学校「まなびぃや」が実現してきた子どもとの関係・チーム作り~
2023年1月「魅力かがやく学校・地域づくり」奈良県教育委員会教育長賞を生駒市立あすか野小学校学校運営協議会及び あすか野小学校区地域学校協働本部における取組が受賞しました。また、2月には「令和4年度『コミュニティ・スクールと地域学校協働活動の一体的推進』に係る文部科学大臣表彰」も受賞しました。
あすか野小学校をはじめ、生駒市でのコミュニティ・スクールの取組は生駒市の広報誌「いこまち」での紹介をされています。https://www.city.ikoma.lg.jp/cmsfiles/contents/0000004/4970/230201_all.pdf
今回は、数ある取組の中から放課後子ども教室「まなびぃや」をあすか野小学校で運営されているメンバーを代表して飯田さんにお話をお伺いしました。
まなびぃやを始めて3年。一番印象に残っていることはどんなことですか?
まなびぃやを初めて行った1回目の時、終わった後に何人かの子どもたちが「あー楽しかった!」と独り言を言ったんです。その時、すごく驚きました。誰に伝えるでもなく、独り言が漏れてしまうくらい、この時間が楽しかったのか、と。それが嬉しかったですね。子どもたちは宿題が終わった後、オセロや折り紙をして遊んでいたのですが、今でも、あの1回目の驚きと喜びを忘れられません。
子どもたちからもれてくる本音はとても嬉しいですね。
3年間継続する中で変わっていったことはありますか??
当初まなびぃやで考えていたのは、スタッフが子どもたちに何かを教える時間や機会を作ることでした。しかし、今は子どもたちと私たちは「教える」「教わる」の関係ではなく、「一緒に遊ぶ」「一緒に楽しむ」という関係になっています。
私たちはオセロや百人一首を真剣にやっても子どもたちに負けるんですよね。子どもたちに敵わないという出来事をキッカケに、徐々に私たちの中で子どもたちに接する気持ちが変わっていきました。
「何かを教えてあげよう」ではなく「一緒に遊ぼう」という気持ちになってから、より子どもたちに親しみを感じてもらえるようになった気がします。
子どもと大人ではなく、一人の人間として関係を築かれていったのですね。子どもたちと一緒に遊ぶって、すごくエネルギーが必要だと思うのですが、疲れませんか?
疲れますよ(笑)
でも、心地よい疲れです。
最初は子どもたちの「楽しかった!」という言葉が励みでしたが、徐々に子どもたちの感想に関係なく、真剣に勝負して、笑って、悔しがることに私たち自身が喜びを感じるようになりました。
子どもたちと一緒に制作したり、遊んだりする中で、意識していることはありますか?
まなびぃやでは工作をすることも多いのですが、作り方を教えても、詳細までは言わないようにしています。自分の頭で考えてほしいからです。
もちろん、危険なことは最初に注意しますが、それ以外は自由に作ってもらいます。工作も子どもたちには敵いません。そんな自由な発想でつくるのか!と驚かされることも多いです。
まなびぃやでは、子どもたちが自分で考えて進めていくことを大切にしています。関わるスタッフみんなが同じ想いを持って、子どもたちに接しています。
スタッフ全員が同じ想いや考えを持つことは簡単そうに見えて、実は非常に難しいことだと思っています。最初から、みんなで同じ考えを持っていたのですか?
毎月、スタッフで会議をしていますが、最初の1年間は意見の相違がありました。会議を積み重ねていくうちに自然とすり合ってきましたね。
会議の時に、まず前月のまなびぃやについて振り返りの時間を取ります。やって良かったこと、反省点、改善点を話し合うのですが、それらを繰り返す中で「大切なこと」が徐々に明確になって、みんなが同じ方向に向いていったという感じです。
「まなびぃやの目指すべきものは〇〇です!」ということを決めたことはありません。自分たちのやってきたことを振り返ることで少しずつ形になってきました。
地域活動において、人を集め、良いチームにしていくことは非常に重要ですよね。なぜ、まなびぃやは人集めとチームづくりが上手くいっているのでしょうか?
まなびぃやはあすか野ミライ会議というあすか野地区の活性化を考える会議が母体となっています。
そこで出たアイデアを実現する場所が学校だったんです。
「学校で放課後子ども教室をするから集まってください!」ではなく、「あすか野を元気にするために何をする?」を考えるために集まったメンバーで「学校で放課後子ども教室をしよう!」となり、取組を始めました。
最初から人が集まっている状態でまなびぃやを始められたことは、とても良かったと思っています。もちろん、今ではミライ会議のメンバーだけでなく、地区以外の方々も参加してくれていますし、運営当日は大学生なども来てくれて、色々な方が関わってくれるチームになっています。
やることが先にあるのではなく、チームが先にあったということですね。ありがとうございます!最後に、今後まなびぃやの展望があれば教えてください。
今のやりかたは間違いではないと思っています。ですので、特に問題のない限りは続けていきたいです。今は、参加できる人数に限りがあるので、参加を希望する子どもたち全員にきてもらえるようにするにはどうしたらいいか?を考えていきたいと思います。
<編集後記>
子どもたち一人一人と対等な関係を気づき、人間としての信頼関係をしっかり結んでいるのだと感じました。
自分の住む町にあだ名で呼び合える大人がいること。
真剣勝負ができる大人がいること。
信じて待ってくれる大人がいること。
そして、自分との時間を心から楽しんでくれる大人がいること。
それらは子どもたちにとってかけがえのない財産になっていくはずです。
飯田さんをはじめ、素敵な地域の方に見守られながら育つ子どもたちの未来が、私は楽しみで仕方ありません。