「なんでかな?」「どうしてかな?」を問い続ける平和教育
令和5年度、生駒市内5校の小学校6年生に「問いを軸にした平和教育」を合同で行いました。簡単に答えや解決策を出せない分野だからこそ、「問い」から当事者意識を醸成し、自ら探求し、次の「問い」につなげていきます。すぐに答えを出そうとせず、でも諦めず、常に関心を持ち続けて「平和や争いに関して問い続けること」の大切さを考える授業を全3回実施しました。
オンラインのWEBアンケートやロイロノートを活用し、リアルタイムで問いを出し、それを振り返りながら深めていきました。
第一回 なぜ争いが起きるのか?
大分大学大学院教育学研究科准教授(研究テーマ:持続可能な開発のための教育)の河野先生に授業を行っていただきました。
空からのぞいた桃太郎という絵本を読んで、「あら変だな?」「どうしてかな?」と思うところを子どもたちに書き出してもらいました。
河野先生から授業の最後に
「もともと戦争なんて、やっていいはずがないのに、全然なくならないから、『?(ハテナ)』だらけです。
『?(ハテナ)』の答えを考えて、さらにその答えに?をみつけて・・・を続けていくと、平和な社会にするために何を考えなければならないのかが見つかるかもしれません。」というメッセージがありました。
第二回 多様性とはなにか?
第一回の「?(ハテナ)」を考えるヒントとして、第二回はキャリア教育プランナーである尾崎先生から多様性についてのレクチャーとカードを活用したワークショップを行い、さらに問いを広げて行きました。
桃太郎の話を知らないタンザニア・インドネシア・イランの画家が描いた作品を例に出しながら、「自分たちの国の当たり前が外国の当たり前ではない」ということを視覚的に感じてもらいました。
その後、地球がつながっていること、世界の動きは日本に影響が出るし、日本の動きも世界に影響を与えてしまっている事例をSDGsの観点から紹介しました。
世界と日本の「当たり前の違い」や「影響」について考えた後、自分と友だちの間にも「当たり前の違い」があることを体験するために<みえない多様性>のカードゲームを行いました。
第三回 問いを深める
最終回はじっくり問いを深めていく時間としました。
各学校で実施してきた平和学習や歴史、国際理解の授業で学んできたことも踏まえながら、個人で深め、グループで対話をしながら「1つの問い→自分の考え→新たな問い→自分の考え」を繰り返していきました。
問いを深めた後、折り紙ワークシートに「問い」と「考え」を書き込んで、三角錐にを作ってもらいました。
<この三角錐で伝えたかったこと>
①「争いがおこる雰囲気(文化的暴力)」は実態が見えないが、「問い」を持つことでその問題を少しずつ把握することができること。
②同じ出来事を見ても、人によって「問い」は変わる。さらに、その「問い」に対する考えはその人と対話しないと(中を開かないと)わからないこと。
③その根底にある「歴史」「宗教」「文化」「地理」的な問題があること。
「この三角錐を家に持って帰ってグルグル見たら、もっと違うことに気が付くかもしれません。俯瞰的に、多角的にものごとを見て、問いを持つことを忘れないでください」と伝えて授業を終えました。
実施後の児童感想
「問いを深めていくと、どんどん問いが変わっていく。」
「自分が考えた問いは終わりがないくらい多いことに気が付きました。」
「戦争への問いはたくさん出てきて、答えも出せたけど、その答えになるほどと思えることはなくて、どんどん次の問いが出てきたのが不思議でした。」
「戦争の原因はどんどん繋がって自分にも関わっているんだなと思った。」
「考えを深めていく中で今まで気にしなかった事とも、共通点があることに気がついた。」
「戦争のことなどは自分たちには関係ないと思っていたけど身近なものに関係があることをしれてよかった。」
「疑問に思ったことから自分の考えを出すのは結構簡単だったけど、そこからさらに疑問点を出したり、考えを出したりするのは難しかった。」
「問いを深めることで相手の心情が読み取れたり、状況が理解できる。」
「喧嘩したときにどうすればいいかがわかった」
「他の人と意見を深めていくと、新しい意見が見つけられることが分かった。」
「一気に深く考えていくんじゃなくて、深めていく中でも浅くからのほうがどんどん深く行けるなと思いました。自分の中の問いが深くなるに連れて、とても興味深くなったのでとても楽しかったです。」
「僕と違う問いであっても、そこから同じ問いへ進んでいく友達もいた。でも、僕と正反対のこたえを持っている子もいた。」
「まだ完全には、わからないからとりあえずは自分が喧嘩などをしたら力で解決するのではなくてもっと話し合いなど色々な視点で考えたいな〜と思いました。」