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あすか野小学校の学校司書、高見先生の世界を覗いたら、そこは湯治場だった。

<あなたの知らない学校司書の世界>
第一弾はあすか野小学校で学校司書をされている高見先生にお話を伺います。(インタビュアー:キャリア教育プランナー尾崎)

あすか野小学校で学校司書をされている高見先生

よろしくお願いします!早速ですが。
最近子どもたちに人気の本を教えてください。

「学校では教えてくれない大切なこと」が人気ですね。キャッチーな題名だし、漫画で読めるのでとっつきやすいのだと思います。
あと、『アレにもコレにも!モノのなまえ事典』や『きっと誰かに話したくなる激レア名字クイズ100』など豆知識が増える本も人気がありますね。

この本、面白い!
トリビアをだれか教えたくなりますね!

大人でも知らないことがたくさん書いてあるので、子どもたちに教えてもらえたら驚きがたくさんありますね。

最近、こどもたちにおすすめをして
印象に残っている本ってありますか?

『保健室経由 かねやま本館。』という本があります。学校の保健室が中学生専用の温泉につながっているのですが、浸かるとタオルに自分のモヤモヤが現れるんです。あまり学校に行きたくない子たちが全国からここに集まってくるんです。
コロナで外に出られなかった時期、「こんな温泉いきたいねー」と子どもたちと話をしていました。

私も読みましたが、大人も泣けますよ。読み終わった後、自分で温泉の素を買ってきて家のお風呂につかりました。ゆっくりするのも良いなーと自分を見つめなおす機会になりました。4巻目は大人の人たちの話なので、どなたが読んでも面白い本だと思います。

私も読んでみます!
図書室(学校図書館)にある本は大人が読んでも面白いのですね!

お父さんやお母さんが自分の読みたい本を子どもたちに伝えて図書室から借りて一緒にお家で読むこともあります。誰にでも昔読んだ思い出深い本がありますよね。図書室はタイムカプセルのようなところで、大人も本を読むことで当時の気持ちを思い出せるんです。

『はれときどきぶた』『それいけズッコケ三人組』『怪人二十面相』などが保護者にも人気のようです。

コロナ禍は児童が図書室に集まることもできず、
本の消毒など管理が大変だったと思います。
読書習慣の取り組みなども実施しにくかったと
思いますが、図書室ではどんなことをされていましたか?

通常だったら図書委員の子が「読書ビンゴ」のようなカードを作って、読書への興味がわくような取り組みをしています。コロナ禍では「本のリクエストアンケート」を取りました。各教室に委員の子が「読みたい本」を聞いてくれたんです。
「自分が読んですごく良かったから、他のみんなにも読んでほしい!」とか「どうしても読みたいけど売っていない」など20冊程度のリクエストが出てきました。

全部探したんですか?

探しましたね。いろいろな方法で。結構大変でした。でも、楽しかったです。購入できた本は図書委員会発行の図書室だよりで報告をしました。リクエストにこたえることはできなかった本はその理由も含めて一人一人にメッセージを送りました。

ものすごく丁寧な対応をされていますね。
この図書室もすごく丁寧に作られていますよね。

私は学芸員の資格も持っているので、子どもたちが興味を持つ展示を心がけています。図書室に来た時にちょっとした発見があるといいと思っています。

「鎌倉殿の13人」の特集展示。金と銀の兜で子どもたちの興味をひく
ムクロジの実を学ぶ際には羽根つきを子どもたちと実際にしてみる。
『びっくりまつぼっくり』の本の紹介は箱の中からビックな松ぼっくりが出てくる!

とても素敵ですね!
先生と話をしていると子どもたちへの愛と
同じくらい本への愛も感じます。
小さい頃から本が好きでしたか?

私は図書館も図書室もない田舎で育ったんです。私の母が文庫活動(地域の子どものために図書を収集し,貸出サービスをすること)のお手伝いをしていました。そこに通って読み聞かせを聞いていた時に「こういう人になりたいなー」と思ったんです。

学校司書をされていて、
一番うれしい時ってどういう時ですか?

子どもたちが本の感想を言ってくれることや、展示してる本を手に取って読んでくれた時ですかね。子どもたちだけでなく、先生からも「おすすめの本を教えてください!」と聞かれることがあり、その本を読んで感想を共有してくれるとうれしいです。

あと、子どもから「先生!私と好きな本を交換し合おう!」と提案を受けて交換したり、「冒険の本を書いたので読んでみてほしい」と初めての読者になったり、帰り道で一緒になった子から「お化けのお話して!」言われて、3枚のお札やのっぺらぼうのお話をしたり。
学校司書ならではの嬉しいエピソードはたくさんあります。他にも「図書室が好き」って子がいると嬉しいです。ここに住みたいって言って来た子がいるんです(笑)この空間が好きで。そういうことを聞くと自分のやっている仕事が「良かったんだな」と思えて嬉しいです。

住みたいほど!それほど快適な場所なのですね!
気になったのですが、おすすめの本ってどのように選んでいるのですか?

その人が「今どんなことに興味があるのか?」「今までどんな本を読んできたのか?」などを本人に質問をして、それだったら「これはどうですか?」と提案します。だれに対してもおすすめの本や良い本があるわけではなく、その人やその時の気持ちで良い本は変わってきます。子どもたちにも先生たちにも同じように対話をして、本をおすすめしてますよ。

図書室の展示、子どもたちのリクエストへの対応、そしておすすめの本への返答、どのお話も本を通して子どもたちに寄り添っていることが強く伝わってきましたし、高見先生の本に対する熱い気持ちも伝わってきました。
ありがとうございました!


<編集後記>
高見先生から教えてもらった本『保健室経由 かねやま本館。』を早速家の近くの図書館で借りて読みました。
図書館だったので、必死に涙をおさえようとしましたが、あふれ出てきてしまいました。中学生専用の湯治場という素晴らしい世界観、中学生の繊細な心理描写とリアルな言葉、次を読まずにはいられないストーリー設計。
大人にもぜひ読んでもらいたいです。
子どもとの接し方と自分への接し方が少し楽になる1冊です。
物語の「かねやま本館」は保健室にありますが、あすか野小学校の図書室は高見先生によって子どもたちがエネルギーをため、世界を広げ、自分を見つめることのできる小学生専用の湯治場になっているのでないかと今回の取材で感じました。