試行錯誤の1年間!生駒南第二小学校6年生の児童と先生の「乙田の人形浄瑠璃」への熱い想いが叶えたものとは?
生駒市立生駒南第二小学校は令和3年度から、地域の魅力発信アプリ「にしょロボくん」の開発を通して、全校児童が探究活動を行っています。
今回はその取組の中で6年生の先生と子どもたちが試行錯誤しながら1年間行ってきた「乙田の人形浄瑠璃」のお話です。
その軌跡を先生の言葉とX(旧Twitter)を中心に振り返っていきます。
6年生の探究テーマは「地域の昔のこと」
4月は、担任として、子どもたちの意欲的な取り組み方を模索しました。
5月、社会科で歴史の学習が始まるにあたり、「自分たちの町にある歴史」について「地理院地図でタイムトラベル!」という授業を行いました。地域の航空写真を昔に遡ると、校区のほとんどが森や山に戻る中、家々が残る地域があることに気づき、ここに校区の歴史の秘密があるのでは・・・と子どもたちは興味を持ちました。
昨年「地域の昔のこと」を探究した子どもたちが、萩の台文化財保存館というところに秘密のヒントがあると言い出しましたので、各々1人1台端末を使って「にしょロボくん」を検索しました。そこには、家々が残る地域が乙田村という名前であること、その村では当時乙田人形浄瑠璃という人形芝居が行われ人気を集めていたこと、また、当時の床本や人形が奈良県の有形文化財に指定されていることを知り、それらが展示されている保存館に自分たちも見学に行きたいと自発的な声がでました。そこで、地域ボランティアにも登録してくださっている文化財保存会の方に相談させていただきました。
6月、保存会の方による事前学習会の後、保存会の皆さんで交通整理や展示物の解説など、子どもたちのために十分な準備と用意をしてくださって、見学が実現しました。
子どもたちも熱心に聞いたり、気になることを質問したりする有意義な時間となりました。
7月に入り、子どもたちに「これからどんなことを知ったり、学んだり、取り組んだりしたいか?」を問いました。
「人形浄瑠璃とはどんなものか知りたい。」「実際に人形浄瑠璃を見てみたい。」「人形を触ってみたい。」「お兄ちゃんが観せてもらったっていう淡路人形座の人の公演を実際に見たい。」「自分たちで人形を作ってみたい。」「人形芝居みたいなものを自分たちでしてみたい。」「人形をどんな風に動かすのか知りたい。」などの意見がでました。
そこで、私はまず淡路人形座へ問い合わせ、文化庁の事業以外でも来校が可能なのかを確認しました。しかし、プロの方のお支払いする代金は大変高額なことを知り、子どもたちには淡路人形座の来校が不可能であることを伝えました。
残念がる子どもがたくさんいました。
夏休みは、2学期以降の取組を子どもたちとさらに進めるためのヒントを探しに南あわじ市に向かいました。淡路人形座の公演を見たり、淡路人形浄瑠璃資料館を見学したりして、現地で情報を集めました。人形座では発泡スチロールとペットボトルで、簡易の人形が作れること、また資料館で出会った学芸員の方の説明で、地元の中学生や高校生が部活動内で人形浄瑠璃を行っていて、郷土文化の継承に誇りをもって取り組んでいることを知りました。
新型コロナの流行で行動制限等がある前は、淡路島を出て公演を行っておられたことも展示物の資料から分かりましたので、一縷の望みを抱いて、三原中学校へ連絡を入れました。
三原中学校郷土部のご担当の先生とお話させていただき、生駒南第二小学校の児童の想いを伝えたところ、12月に小学校まで来て、人形浄瑠璃の公演をしてくださることが決まりました。
9月、三原中学校郷土部部員による演目の実演、人形浄瑠璃の解説、さらに三味線や人形に触れる体験ができることを子どもたちに伝えると跳び上がって喜んでいました。
11月、三原中学校の郷土部部員のみなさんとオンラインで事前交流をしました。モニター越しに動く人形を食い入るように見ていて、少し年上のお兄さんお姉さんに「なぜ、この部活に入ろうと思ったのか?」などたくさん質問をしていました。
直接会えることへの期待とワクワクがどんどん膨らんでいきました。
12月、三原中学校の郷土部が学校で公演をしてくださいました。体験の時間には実際に人形を動かし方を教わったり、三味線を弾いたり、太夫と一緒に大きな声でセリフの練習をしました。
本物の人形浄瑠璃に感動し、優しくかっこいい中学生たちに憧れを持った子どもたちは「自分たちも演じてみたい!」という強い想いを持ち始めました。そして、にしょロボくんの「地域の昔のこと」を5月に調べたときに、生駒や地域の乙田村に楽しい昔話が伝承されていることを思い出し、それを演じてみてはどうかと意見が出ました。地域ボランティアでもあり、生駒おはなし会にも所属される方が、子どもたちの活動に協力しようと乙田村に伝わる昔話や生駒の昔話を読み聞かせしてくださいました。
1月、生駒の昔話と乙田の昔話を1つずつを自分たちで演じることに決めました。
長年、人権教育に携わっておられた大久保佳代先生から30年前に三年峠というお話用につくられ、今は衣装ケース内で眠っている人形をいただき、登場人物に合わせて、自分たちで作り直すことになりました。
台本作り、背景の用意、人形のリニューアルを自分の得意を活かして、分担して行いました。
2月、公演に向けて広報・演出・音響・道具・人形使い・太夫・司会の7つの役割で行うことを子どもたちが決めました。担当の役割の確認、メンバー決め、各担当との打ち合わせや動きの確認、準備を子どもたちで進めていきました。
2月29日と3月1日、地域のボランティアの方や在校生をお呼びして、人形芝居を行いました。二日間に渡って、5回公演を行った子どもたちの頑張りに感動しました。
後日、学校に匿名でお手紙が届きました。
【1年間、試行錯誤してきた子どもたちと先生の感想】
3月、「にしょロボくん物語」という授業を本校の西浦弘望先生がしてくださいました。にしょロボくん誕生のルーツをたどりながら、6年生たちは自分たちの取組の意味を知りました。
自ら子どもたちが考え、動き、作ってきたからこそできた「伝承」です。
生駒南第二小校区の文化はにしょロボくんによって永遠に「記録」され、子どもたちによって「伝承」されました。
地域も、子どもたちも、先生も試行錯誤し続けたからこそ、実現したい姿を自分たちで叶えることができました。
★参考