児童全員が「これからの学びで大切だ」と回答した学び~プロジェクト学習で児童自らが主体的に作る学習発表イベント~
活動名
児童全員が「これからの学びで大切だ」と回答した学び
~プロジェクト学習で児童自らが主体的に作る学習発表イベント~
目標・方針
令和5年度に生駒市立俵口小学校の目指す児童像として「児童が自ら学び続ける姿」を設定した。その目標を達成するために、3年生担任では、児童が自己決定する機会を多く持つことが重要であると考えた。自分が何を、どのような手段で、誰に伝えるかを決めて発表できるようになることをゴールに設定し、1学期からの取組を始めた。
活動内容
1学期から学習の大きなテーマを「まちづくり」に設定し、社会科を中心として現在の生駒市の様子を学んだ。その過程で、さまざまな仕事で働く人に出会うことで、どうしてその仕事をしているのか、その仕事のやりがいは何なのか、話を聞いていった。
2学期の終わりにはまとめのきっかけとして、学習テーマに沿った問いを自分で設定することによって未来について考える機会をつくった。ここで子どもたちが設定した問いに基づき、これからの生駒市の未来について考え始めた。
3学期には、自分たちでまとめをアウトプットすること、また、発表の場をイベントとして作り上げていくことを発表した。企画の中心を担ったのが各クラス3名ずつの合計9名で構成される「プロジェクトメンバー」である。今年度、運動会、音楽会ともに3年生では児童自身が主体的に行事に参加するために、クラスの代表となる「プロジェクトメンバー」を決めて進めてきた。メンバーの仕事は、練習計画を立てる、毎回の練習前の全体への声掛け、振り返るコメントであった。3学期の学習発表イベントでは、イベントの中身の企画も任せることにした。
学習発表イベントに向けてプロジェクトメンバーが決めたことは主に次の5つである。
1.発表のテーマごとに異なる教室で発表する。
2.イベントの開始と終了にメンバーからの挨拶を行う。
3.会場図と生駒市クイズ、スタンプラリーが記載されたパンフレットを配布する。
4.今年度のゲストティーチャーを招待する。
5.学年全体で共有できるようなこのイベントのめあてを考えてまとめる
学習が進むにつれてイベントの規模が大きくなってきたため、「サポートメンバー」として、ほかの児童にもボランティアを募集し、マンパワーを集めた。「サポートメンバー」は各自での適正を判断しつつ、ポスターづくり、招待状づくり、当日受付案内を担当した。サポートメンバーが多くの役割を担ったことで、学習内容、イベント運営の双方に広がりや深まりが増したと思われる。
2月13日の学習参観をこのイベント当日とし、保護者以外にも多くのゲストティーチャーを招いて開催することができた。ゲストティーチャーとは1学期から、まちづくりを学ぶために出会ってきた人たちである。児童たちは、それぞれの発表を行い、付箋に参観者のフィードバックを記入してもらって、学習発表イベントは終了した。このフィードバックを集めることも児童たちが考えたことである。
取組の過程(ICTの活用)
今回の取組では、それぞれの役割を担う児童がさまざな場面で協働的に活動するため、情報共有の仕組みが必要であった。そのための工夫が2つあった。
1つめは、学年サイトによる情報共有である。児童がアクセスできる学年の教師の手でポータルサイトを作成した。児童や教師が各教科の資料と共に、まちづくりの計画マップを掲載した。このサイトによる情報共有を通して児童が見通しをもてるようにした。
2つめは、ドキュメントやスプレッドシートによる情報共有である。プロジェクトメンバーの打ち合わせメモから、サポートメンバーの適正調査、作業の進捗の確認など、さまざまな場面で共同編集機能を活用した。クラスを越えて活動を続けるためには、一人一台端末におけるリアルタイムに近い形での、また双方向型の情報共有は必須であり、大変有効であった。
活動の成果
発表会当日は、参観日でもあり多くの保護者が来校した。また、サポートメンバーの招待状チームによる周知や広報の成果で、たくさんのゲストティーチャーが来校した。(生涯学習課、都市計画課、商工観光課、高山製菓、生駒コープ、給食センター、地域ボランティア)ゲストティーチャーも子どもたちとの再会を喜び、熱心に発表を聞いて回っている様子だった。
発表会後のフィードバックでは子どもたちの学びを肯定的に評価するコメントが多く寄せられていた。
イベント後に、3年生児童を対象にプロジェクトとして学んだことに対してアンケートを行った。以下がその結果である。
児童の自由記述
・お別れの前にみんなでカフートをしたいです。
・これまでプロジェクトとしたけど、自分たちで考えることは、楽しかったです!!!
・自分や仲間と一緒に学べてよかったです。
・とくにない
・がんばろうつぎも
・生駒未来プロジェクトになれてとても嬉しかったです。もっとプロジェクトをやりたいと思いました。
・3年生でプロジェクトができて嬉しかった
・音楽会プロジェクトになれて楽しかったです。
・ありがとうございます。
・学びは、自分にとって大切。
・プロジェクトメンバーを3人以上にしたらいいと思います。例えば4人から5人くらいできっちり仕事ができます
・仕事の量に不満はありませんが、もう少しきっちり仕事をしたいです
・ありません。
・来年も頑張りたいと思う
・3年生たちで企画を考えてもいいんじゃないかなと思います。
・まず、プロジェクトをやってよかったとなるプロジェクトにする!!
・算数とかの学びがいいと思いました。
考察
児童へのアンケート結果から、プロジェクトを立ち上げて学ぶことを肯定的に捉えており、プロジェクト学習を通して、行ってきた学び方の大切さを感じていることが分かった。実際の準備や活動中も児童の意欲的な姿が見られた。問いの設定、調査、成果物の作成、発信等の手法の習得や情報の共有などにおいて教員が伴走者、促進者的な役割を担うことになった。学びの責任を児童に委ねていくことが、主体的な学びにつながったのではないかと考えている。これからは、単に教え込むのではなく、さまざまな出会いや経験を通して、児童自らが「学び取る」ということを目指していきたい。