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未来を生き抜く力を養うための新しい授業を予算100万円で提案せよ!

プロジェクトの概要

11月9日(木曜日)・10日(金曜日)、2日間かけて光明中学校と大瀬中学校が合同でオンライン職業体験「未来を生き抜く力を養うための新しい授業を予算100万円で提案せよ!」に挑みました。

今回のプロジェクトは、中学2年生の生徒たちが未来を想像し、現状の授業に対して自ら課題を発見し、解決策を考え、提案書を作り、プレゼンテーションを行います。このプロセスを通して社会を変革し、未来を作り上げていくために必要な「新たな価値を創造する力」「対立やジレンマを克服する力」「責任ある行動をとる力」(OECD EDUCATION2030が定義)を養うことを目的としています。事前授業では「なぜ授業中は発言がしにくいのか?」「なぜチャイムはキーンコーンカーンコーンなのか?」「古い授業ってなに?!新しい授業は必要なのか?」「授業をしない授業をするとどうなるのか?」など様々な視点から生徒たちが新しい授業への問いを立ててきました。

令和5年4月1日、こども家庭庁が設置されました。こども基本法第11条にはこども施策に対するこども等の意見の反映について書かれており、こども・若者からの意見を聴くさまざまな取組が始まっています。生駒市教育委員会においても、今回の生徒たちの提案を受け、今後の教育施策に反映していきたいと考えています。

<1分でプロジェクトの様子をまとめた動画>

<3つのポイント>
1.課題発見から提案まで、ビジネスのプロセスを体験 
生徒たちは4人1チームで活動します。未来の定義→問題発見(自ら問いを立てる)→解決策のアイデア出し→企画を立案→提案書作成→プレゼンテーション→審査を行います。このプロセスを通してビジネスの現場で新規事業の立案や、既存事業の改善を行う際に必要な力や方法、手順を体験します。

2.多様な職業および経験を持つ29歳以下の23名の審査員 
これからの未来を共につくる29歳以下の社会人が生徒の提案を「未来を生き抜く力を養える授業か?」「チームの個性を活かしているか?」「お金の使い方が適切か?」の3つの観点から審査し、優勝チームを決定します。その後、各チームに丁寧なフィードバックを行います。

生駒市では株式会社ユニーク(本社:茨城県筑西市辻、代表取締役:山崎 貴大、https://u-29.com/)と連携し、ユニークな人生を歩む10〜20代の社会人・起業家等に対して、学校教師から登壇依頼ができるゲストティーチャーマッチングサイト「U-29 キャリア図鑑(https://u29.notion.site/U-29-7adab0a899f74ce0ba3112446ed42444(別ウインドウで開く))を企画・制作し、2023年3月30日に試験(β)版を公開しました。今回もこのサイトを活用し、審査員協力者の募集を行い、23人に協力していただきました。

プレスリリースより

3.予算(お金)の使い方を考える
過去2回のオンライン職業体験では予算の条件なく、提案を考えてもらいましたが、今回は100万円という机上の制限を設けました。実際にビジネスの現場で提案を考える際、予算は大切な要素です。制限をあえて設けることで生徒たちの創意工夫を促します。

【事前授業①】問いの作り方

これからの時代、問いを自ら作る力はとても重要になってきます。
しかし、日常の当たり前に「問い」や「疑問」を持つのは簡単なことではありません。最初は「問いを作るってどういうこと???」と不安そうな表情でしたが、2時間かけて、<問い出し><問いの変換><問いの選択>を行い、少しずつ掴めてきたようでした。

🔳出てきた問いの例
・古い授業ってなに?!
・授業をしない授業をするとどうなるのか?
・小・中・高の区別はなぜ必要なのか?
・向かうべき場は黒板なのか?
・なぜチャイムの音が「キーンコーンカーンコーン」なのか?
・授業中はなぜ発言しにくいの?

【事前授業②】アイデアの出し方

新しい授業をつくるにあたって、「新しいもの🟰既存✖︎既存」の公式を説明しました。その後、10分で100個の<新しい授業に関係しそうなキーワード出し>を行い、その後キーワード同士を掛け算して授業アイデアを作ってもらいました。

アイデアをたくさん出している様子

【事前授業③】企画の作り方

最後に、出てきたアイデアをどのように企画に落とし込むのか?ビジネスの現場で用いられるリーンキャンバスを使ってまとめていきました。

リーンキャンバスに真剣に書き込む様子

【本番1日目】問いを作り、アイデアを出し、企画に落とし、提案書を作成し、プレゼンの準備をする

丸一日、チームでタイムマネジメントしながら進めていきます。
「問い作り」に時間をかけていたチームもあれば、「アイデア出し」から始めるチーム、最初から資料を作り始めているチームもあり、各々が自分たちで時間を決めて動いていました。
6時間という長丁場、初体験ばかりで壁にぶつかり、苦しみながらも最後までやり遂げました。

2校が合同で準備に取り掛かる様子
問いを作り、アイデアを出し、企画に落としこみ、最後に資料を作成する様子

【本番2日目】審査員に提案&質疑応答&フィードバック

今回は23名の審査員を7グループに分けました。
生徒は事前に審査員の記事を読み、自分たちが興味を持っている生き方や経験、職業の審査員を選んでいます。
1グループ約10チーム。3分のプレゼンテーション➕2分の質疑応答のやり取りを行い、優勝チームを決定します。その後、全てのチームへ審査員からフィードバックを行いました。終わった後は自由に質疑応答ができる交流の時間を持ちました。

厳しい角度からの質問に戸惑ったり、一緒に笑ったり、仕事について質問をしたり、生徒たちは審査員から色々な刺激を受けていました。

オンラインで画面共有しながら発表する様子
発表後、審査員から質問を受ける様子

生徒たちからの提案総数、70以上。それらは実に多種多様なものでした。
■食糧難の未来を見据え、「昆虫の飼育と調理の授業」を提案。先生は昆虫博士とコックが務める。
■「子ども時代の好奇心を持ち続けるためにはどうしたらよいか?」という問いからスタートし、学校の外に出て、自分の好きなものを増やす授業を企画。
■AIにはなく、人間だからこそできる「心を動かす感情表現の授業」を俳優や劇団員が行う企画。予算の足りない分はクラウドファンディングで補い「授業に参加できる権」を返礼品にする提案。
■SNSの「いいね」に満足し、恋愛がしにくくなる未来が来ると予想し、「恋愛の授業」を企画。有名人などを講師として招くにあたって、予算が足りないところは有料配信によって稼ぐ提案。
など、多様な問い、授業内容、講師陣、お金の集め方を提案してくれました。

生徒も、私たちも、ここからがスタートです。
生徒たちは審査員からもらったアドバイスをこれからの中学校生活に活かしてほしいですし、教育委員会として各提案の傾向などを分析し、取り入れられるアイデアから実践をしていきたいと思っています。

【終了後の感想】

生徒たちの感想(一部抜粋)

<チームでの協力>
「班で集まって問いを出したこと。」
「みんなで案を出してプレゼン資料を作ったこと」
「画面越しと言っても人に見られるプレッシャーに耐えながら発表したこと」
「最初いいアイデアが全然分からなくて何をしたらいいか分からなくて手が止まっていたけどふと頭の中にいいアイデアが降りてきた。」
「昨日の6時間まるまるキャリア教育は大変だったけど、今日の発表をしてみて昨日がなかったら今日のように素晴らしい発表はできないなと感じました。」
<未来に対する興味>
「班のみんなで様々な意見を出し合いそうゆう考え方があるんだと驚くことが 多くあり、未来は私達が背負っていくものだと改めて感じました。」
「自然災害や戦争はいつ始まるかわからない。」
<審査員との交流>
「一番印象に残っているのは、質疑応答の場面で難しい質問が出たときも相談して自分たちなりの答えを出せたことです」
「実際に自分で会社を経営している人たちから自分たちの発表の良かったところや改善点を聞けたところ。」
「審査員の皆さんに色々な失敗談や中学の頃の思い出話を聞いたこと。 人によって色々な考え方があり、それを聞いたときに共感したこと。」
「審査員にきてもらい実際そういうアドバイスを聞くことで、ネットとかで書いてるのを見るより印象づよく感じた。」
「自分では完璧なアイデアと思っていても、色々と審査員に質問されていくと、「あ、」と抜けていることが出てきて「...」という状況に正直なりました。」
<2校合同授業>
「こういう2校合同ってことはめったにないことだけど、今回はものすごく楽しかったから、またこんな機会があればいいなと思う。」
「今回の職業体験がなかったら関わることがなかったと思うので新鮮で、良い体験でした。」
「みんな発想力豊かでいろんな考えがあるんだなと思った。」
「悔しかったですが本当に面白いプレゼンだったので今回は負けを認めます。」
「他の学校と授業や、このような体験をすることで新しい考え方や、ものの見方が見つけられました。」

生徒アンケートより

<参加いただいた審査員の感想(一部抜粋)>

教育長から審査員の方々に行った、挨拶の様子

「中学生ならではのユーモアも溢れるものもあったりと今の中学生の思考を垣間見ることができたかと思います。 やはり中学生というところで、足りない観点や知識があったりするのはしょうがないことではありますが、それぞれが自分たちの頭で話を考え、論理をつなげて考えてまとめると言う取組を経験できたと思えたことが何よりも嬉しく感じました。 そして、今後もこのような社会との接点であったり、自分たちで考えると言う経験は大切にしていきながらこれからの世代の学びをより充実させていくことが大事だなと私自身も改めて感じました。」

「印象に強く残ったのは提案の中にいじめ問題が取り上げられていました。私自身も体験者でしたが死者も出るほど大変恐ろしい問題です。 そしてそこをピックアップし発表をするということはとっても勇気と行動力がいることだったと感じます。若さゆえの強い力と熱量でこの問題はしっかり取り上げていかなければならないと思います。大切な私達の心の叫びです。 そして私もその体験者であり、沢山の方の支えがあったから乗り越えることが出来ましたし、今の活動にも大きくつながっています。」

「完成度が高くびっくりしました。緊張されていたと思いますが、発表も堂々とされていて、しっかり各チームごとに問いの設定から企画、予算計画など「自分たちでしっかり考え抜いて一生懸命創り上げたんだろうな」が伝わってきました。 個人的にチームでやり切る体験が、今の仲間と仕事をすることの楽しさにつながっていると思っているので、そのプロセスを体験できるいい機会だなと感じました。 また、中学校を超えて他チームの発表を聞くことは、自分たちと何が違っていて、何が勉強になるのか、という吸収の機会にもなると思うで、素敵な設計だと思いながら参加させていただきました!

審査員アンケートより

各学校のX(旧Twitter)より

<事前授業の様子>

<本番1日目>

<本番2日目>