【平和学習WEEK】あなたの大切なものが奪われそうになった時、あなたはどうしますか?
2月6日~2月10日までの1週間、生駒市内の6校が参加し、様々な視点から平和を考える授業を実施しました。
1週間を通して考えてもらうのは「あなたの大切なものが奪われそう(傷つけられそう)になった時、あなたはどうしますか?」という問いです。
1日目「平和とは何か?」‐大分大学河野准教授‐
「平和ってどんなイメージ?」「平和の反対語って何?」「なぜ戦争が起こるの?」という河野先生の問いに児童が答えながら、少しずつ本質に迫っていきます。
2日目「争いの起こり」‐情報操作の体験‐
1日目に学んだ「文化的暴力(戦争するのは仕方ないという雰囲気や考え方)」を作り出すために少しずつ国民に与える情報を変える情報操作。
今回は、少しだけ児童に情報操作の罠を体験をしてもらいました。
3日目「広島を知る」‐広島電鉄の車庫と当時14歳で運行を支えた笹口さんのご自宅から中継‐
広島電鉄の千田車庫から中継で授業を行いました。
8月6日に原爆が落とされ、その3日後には再び走り始めた路面電車。当時の様子を写真を用いながら分かりやすく説明をしていただきました。
その後、当時14歳で広島電鉄家政女学校に通い、路面電車の運転を支えた91歳の笹口さんにご自宅から当時の様子を伺いました。
原爆が落とされた瞬間のこと、避難所まで歩いていく中で見た光景のこと、避難所で次々に人が亡くなっていったこと、そして死体を山に運んだことなどを語ってくれました。
最後は被爆した電車を丁寧に整備し、今も現役で活躍する車両として維持している整備士さんに想いをお聞きしました。
4日目「世界を知る」‐台湾と中国の問題から、相手の立場に立つ大切さを学ぶ(カードゲーム)‐
戦争は過去の話でも、遠い国の話でもありません。今、私たちの近くまで来ています。今回は、台湾と中国の問題を取り上げ、双方の国の方から個人的な意見をお話いただきました。
お二人のお話を聞き、相手の立場に立ち、相手の行動の理由(背景)を想像する重要性を知りました。その後、児童の身近にあるシーン(ちょっと不快に思う。誤解がうまれそうな場面)に対して、その背景にある理由を想像するカードゲームを実施しました。
※日本イーライリリー(株)が作っている「みえない多様性」のカードを子ども向けに編集して活用。(許可済み)
「相手の気持ちを想像するって難しい。」「今まで自分は相手の理由も考えずにイラっとしてしまうことが多かった。」「なぜ友達がそういう行動を取ったのか?をこれからは考えていきたい」など、児童が自分ごととして考える良い時間になりました。授業後もカードゲームとして教室で遊ぶ子もいました。
5日目「対話する」‐お互いの考え方を知り、振り返る‐
違う学校と少人数になり、当初の問い「あなたの大切なものが奪われそう(傷つけられそう)になった時、あなたはどうしますか?」「この1週間の感想」を話し合い、共有してもらいました。
実施後のアンケートや感想(一部抜粋)
「あなたの大切なものが奪われそう(傷つけられそう)になった時、あなたはどうしますか?」
人間はとても弱くて、自己中心的な生き物です。
自分が攻撃を受けたり、大切なものが盗られたり、家族が傷つけられたら、戦うことで守ろうとします。それを否定することはできません。
児童たちも葛藤しながらこの回答を出しました。
目立った傾向としては
■授業前は「奪い返す」が多かったが、授業後は「話し合う」が上回った。
■「理由」というワードが大きくなり、「聞く」という言葉が新たに出現。
<1週間受けた感想>
「日本国憲法で平和主義が定められている理由がわかった。」
「自分がノリに乗らないと自分が攻撃されてしまうから、平和って難しいと思った。」
「電車の車庫に入ったり、色々な体験をさせてもらうのもタブレット越しでもはっきりと分かるくらいの迫力でした。」
「人それぞれに違った考えがある。それはよくいえば多様性だけど、人の数だけ意見が違うと、それをまとめるのはすごく大変なこと。現に今の台湾と中国の問題だって人々の意見の違いが絡んでいる。周りの思いを考えながら周りの多様性を潰さずに議論をする、このことが出来るように僕はなりたいと思った。」
「平和学習とは、戦争のことだと思っていたけど、そうではないことに驚いた。(人には多様性があって、話し合うことも大切)」
「前までは、「戦争」が他人事だと思ってたけど、このお話を聞いて、自分もしっかり考えなくてはならないことだと思いました。平和が一番だと思うけど、この戦争を通して考えられることもあるんだなぁと思いました。」
「こういう平和学習ということでいろんな人から話が聞けて二度とないチャンスを勉強することができたので、すごく嬉しいし、これを終わらせるのではなく始まりとして、家族にも話ができたらいいなと思いました。」
「はじめ、戦争は遠いと思っていたが、私たちの中にもあるような些細な出来事からおこると思った。互いにもっている意見が異なるのはあたりまえのことだから、争うのではなく話し合ってお互いを尊重しながら問題を解決できたら良いと思った。」
<あとがき> 企画者 教育政策室 尾崎えり子
児童は戦争がダメなことは理解しているし、平和が大切なこともわかっています。世界中、みんな児童と同じことを願っていますが、地球上から争いはなくなりません。
今回、「みんなが、もし攻撃される側に立ったら、どんな行動をとるだろう?」という問いを深く考えることが未来につながる平和学習になるのではないかと思いました。
どんなに争いはいけないとわかっていても自分の大切なものが盗られたり傷つけられたら、怒るし、奪い返したくなります。
弱くて、自己中心的な部分もあるのが人間です。それらを抱えながら前に進んでいくしかありません。
そのための第一歩として、教室の中にもある戦争の起こりに似たような状況(誰かを攻撃して良い雰囲気。自分の正義が絶対だという考え方)に目を向け、怒る前に、無視する前に、一旦立ち止まって相手の背景を想像してみることから始めていきましょう。
今回は5日間を通して平和の基礎と戦争が起こるフレームワークを理解し、情報操作を体験し、過去の戦争を知り、現在の中国と台湾問題を考え、少しずつ自分自身に落とし込んでいきました。児童の感想の中に「今、自分も実は文化的暴力をしている。」「無意識だけど、平和を壊す行動をしているかも。」「自分も守りたいし、人も傷つけたくない。どうしたら良いんだろう。」と今回の学びを自分ごとにして考えている様子が見られました。
大人も答えを持っていないこの問いを、これからも生駒市では子どもたちと一緒に考えていきたいと思っています。